原状回復のガイドラインをおさらい!建具・設備編 | 不動産投資家コミュニティ&スクール「これから大家の会」

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原状回復のガイドラインをおさらい!建具・設備編


□はじめに

 

前回、前々回に引き続き、原状回復における入居者と大家さんの費用負担の割合について

具体例をあげながら説明していきたいと思います。

 

 

□入居者負担になるものとその割合

 

「賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、

その他通常の私用を超えるような使用による損耗・毀損を復旧すること」とされています。

では実際どういったものが故意過失に含まれるのでしょうか。

また、どれくらいの請求が可能なのでしょうか。

 

○建具(扉・襖・障子・柱・ガラス等)のキズや破損

【大家さん負担】→通常の使用でなりうる汚れや劣化

・自然災害によるガラスの破損や亀裂

 

【入居者負担】→故意過失、善管注意義務違反

・落書き

・ペットによる引っかきキズや染みついた臭い

・不注意による破損

 

【負担割合】

・襖、障子=襖紙や障子紙の張替えは1枚単位で経過年数は考慮しない。

色や模様合わせが必要な場合は部屋全体の枚数。

・建具部分や柱の補修=経過年数を考慮しない。

・ガラス等の交換=交換にかかる費用

 

基本的には経過年数を考慮しませんが、考慮する場合はフローリングと同じく

建物の耐用年数から負担割合を算出するそうです。

 

例①)入居期間5年、建具にペットの引っかきキズ

入居期間は考慮されないため、補修にかかる費用をそのまま請求してかまいません。

 

例②)入居期間8年、引戸2枚ある押入れの襖の一方を子供がぶつかって穴をあけてしまった。

穴が開いてしまっているので、下地の補修費用+襖紙の張替え費用

襖紙に関しては色合わせのため2枚分の請求も可能

 

○設備・その他

【大家さん負担】→通常の使用でなりうる汚れや劣化

・経年劣化による設備の故障、使用不能

・通常のクリーニングや鍵交換

 

【入居者負担】→故意過失、善管注意義務違反

・日常の清掃を怠ったことにより発生した水垢やカビ

・手入れを怠ったことによる通常以上の油汚れやすす等

・鍵の紛失

・用法違反や不適切な手入れによる破損、故障

・タバコの臭い等が原因のエアコン洗浄

・残置物の撤去費用

 

【負担割合】

・設備の補修、交換=補修・交換費用を耐用年数経過時点で残存価値1円となるように

負担割合を算出。

・鍵交換=紛失の場合は経過年数を考慮せず、全額入居者負担

・クリーニング=入居者負担となる部分は部位ごともしくは全体の清掃費用相当額

 

≪主な設備の耐用年数≫

・耐用年数5年=流し台

・6年=冷暖房機器、ガス機器

・15年=便器・洗面台等の給排水・衛生設備、金属製の器具・備品

・建物の耐用年数を適用=ユニットバス、浴槽、建物一体の下駄箱

 

例①)入居期間5年、洗面台に物を落としてひび割れ、補修困難なため交換が必要

まず下図を見て下さい。

洗面台の耐用年数は15年とされています。

新品の状態で入居したのであれば、入居期間5年ということで、

交換費用×約67%=入居者負担となります。

 

 

しかし、この洗面台が入居の3年前に交換がされたということが明確な場合、

すでに8年経過していることになります。

すると、下図のようになり、50%程度の価値しか残っていないことになり、

そこから入居期間を考慮し、計算すると

交換費用×約19%=入居者負担となります。

 

 

 

 

ガイドラインには、

「経過年数の考え方を導入した場合、新築物件の賃貸借契約ではない場合には、
実務上の問題が生じる。すなわち、設備等によって補修・交換の実施時期はまちまちであり、
それらの履歴を賃貸人や管理業者等が完全に把握しているケースは少ないこと、
入居時に経過年数を示されても賃借人としては確認できないことである。

他方、賃借人がその物件に何年住んだのかという入居年数は、
契約当事者にとっても管理業者等にとっても明確でわかりやすい。

そこで本ガイドラインでは、経過年数のグラフを、入居年数で代替する方式を採用することとした。
この場合、入居時点の設備等の状況は、必ずしも価値100%のものばかりではないので、
その状況に合わせて経過年数のグラフを下方にシフトさせて使用することとする(上図)。

 

入居時点の状態でグラフの出発点をどこにするかは、契約当事者が確認のうえ、
予め協議して決定することが適当である。

 

例えば、入居直前に設備等の交換を行った場合には、
グラフは価値100%が出発点となるが、
そうでない場合には、当該賃貸住宅の建築後経過年数や個々の損耗等を勘案して
1円を下限に適宜グラフを決定することとなる。」

と記載があります。

 

1つ1つの設備に対して、入居時点で価値100%なのか、30%なのかそういった協議が
されることはあるのでしょうか。

過去のリフォーム内容が全て残っていれば明確に判断できるかもしれませんが、
全てにおいてこの方法を適用するというのはなかなか難しいように感じます。

 

 

□さいごに

 

ガイドラインにも疑問を感じる点はいくつかあります。

何度か改訂されているので、今後も裁判例や事例を踏まえて再改訂されていくでしょう。

 

原状回復の負担額で、裁判沙汰にするほど大きな金額を請求することは
ほとんどないと思いますが、どれだけ請求金額が高くても、
ガイドラインに則って出した金額なのであれば正当なものです。

是非参考にしてみてください。

 

また、入居者が加入している火災保険で原状回復費が賄える場合もあります。

負担額が大きい場合は、そういったことも提案してみましょう。

 

 

記事作成スタッフ

 

臼田

臼田なつこ

入居者管理・物件管理・リフォームに従事。
当会ではセミナーレジュメや画像等を作成。
実際に管理物件の現場で起きたトラブルの対応や解決法の記事を執筆してます。
皆さんのお役に立てる様な記事執筆を目指して頑張ります!